松浦寿輝という人、この年になってようやく出会えて良かったと思える人に出会えること、こんなに困難な時代においてもあることに勇気付けられた。
彼女(石井桃子)は九十代を迎えた頃から、色紙を頼まれると、「子どもたちよ、子ども時代をしっかりとたのしんでください。大人になってからのあなたを支えるのは、子ども時代のあなたです」p.268
子供のための物語が果たすべき唯一の使命とは、この現世に生きるのはそんなに悪いことではないよ、と囁きかけることに尽きるのではないか、と先ほど私は述べた。中井久夫氏の次のような言葉も、実質上、それとほとんど同じ事を言っているような気がする。
子どもの幸せは第一に「きみといっしょにいるといい気持ちになるよ」という大人のメッセージを感じることです。大人がそう思えない時は、せめて心の中でそう唱えてください。すると、あなたの表情は唱えたとおりの顔に近づきます。子どもは敏感にキャッチして少しは心が和むはずです。p.274