人生の後半になってモランディに出会った。こんなに長い付き合いになるとは思わなかった。反復と手仕事を信じなさいとモランディはいう。はい、と僕はいう。
2016年4月7日
ジョルジョ・モランディ展に行ってきた。前にモランディを見たのは17年前、白金の庭園美術館だった。そのとき印象に残ったのは彼の絵というよりモランディという人だった。190cm近い長身を黒っぽいスーツとネクタイに身を包んですっと立っているポートレイトのポスターがいたく気に入って、しばらく仕事場の壁に貼って毎日眺めていた、かっこいい人だなぁって。毎日そのポスターの中のモランディに眺められているととてもいい仕事ができそうに思った。そのあと彼が20世紀を代表する3人の画家として語られていることを知った。ピカソ、デュシャン、モランディ。そして3人それぞれの芸術の本質は「 変化」「 放棄」「反復」だと言う。そしてそれぞれの芸術の理念を「 独創性」( オリジナリティ) 「 皮肉」(アイロニー)「 手仕事」(メチエ)だと言う。ぼくにはこの3人の誰がいちばん優れているのかはわからない。でもこうやって並べられたら「反復」を「手仕事」を信じたい。だからモランディを信じたい。とするとモランディが20世紀最大の画家だということになるのだけれど、そういったことにいちばん背を向けたのがモランディだった。50代前半、モランディのポートレイトを壁に貼って仕事をしていた、次に壁に貼られていたのがボナールだった。いまもう一度モランディのポートレイトを貼って仕事をしたいと思う。モランディとってもかっこいいのだ。かっこいいってどういうことかはわからないのだけれど。モランディが教えてくれること「毎日ひたすら同じ作業に向き合いながら生きること。そしてその中で、小さな発見や慎ましい変化に一喜一憂すること。強くて熱くて華々しい生よりもむしろ、弱くて静かで地味な生に身を捧げること」ジョルジョ・モランディ 人と芸術 岡田温司