いがぐり頭の今さん

今和次郎展に行ってきた。名前だけはよく聞いていたけれど、考現学と言う言葉も言葉だけとは親しかったけれど、今さんをこんな身近に見たのは始めてだった。いがぐり頭のセルロイド眼鏡のジャンバー姿のおっさん、そのおっさん具合がとっても好感が持てる。なかなか会場をあとに出来なかったのは、そんな風姿から来る好感と、手から生まれる、歩くことから生まれてきたさまざざまな想念が生む清々しさかなぁ。
なかでも『バラック装飾社』の仕事は、東日本大震災の後の今と重なって、アートも装飾も、ちっとも前面に出てこないいまを考えると,今の真骨頂ここにありかなと思った。
それにもうひとつ、今の自邸、建築は後ろの方にひっそりとしていて、『家族仲良く』が恥ずかしげもなく真正面に据えられている、そんなことも立ち去りがたかった一つの理由かな。
それにやっぱり庭に目がいく、『ひょうたん形の庭』にはこんな文章が添えられていた。『それで、この芝生の径は4.5間なのだが、その小さなふくらみの中央に別の所で仕立てて造ったツゲのテーブルを植えつけた。緑のテーブルだ。このぐるりに籐椅子を持ち出してお茶を飲むことにしている。緑のテーブルでお茶を飲んだりすると東京の窮屈な家から出てきた客などはことごとくうれしがる。』
またどんどんスケッチしなきゃだ。描いて描いて描いていればきっとどこかに到達するよ。そんな風にいがぐり頭の今さんは言っている。
『私の人生は育つのに20年、絵に10年、農村に10年、衣服に10年、建築に10年、生活学に10年』何事も10年なんだなぁ。