そんな風に言う人いなかった

「幸福というものは、もっとむずかいしいことです」そんな風に言う人いなかった。そんなこと言う福田さんが好きになった。 

 

2016年8月23日 

福田恆存という人を読んでみた。名前は聞くけれど、ちょっと近づきがたい存在だなぁとこれまで縁がなかった、でも丸善の文庫の棚で見かけた「 私の幸福論」福田さんらしからぬタイトルで「ほんと?」って思ってしまった。で、読了後も「 あっ、そう」とそのまま放ってあった、でも日が経つにつれ効いてくるというのか滲みてくるというのか、まさに福田さんという人はそういう人なのだ、地味な人なのだ、滋味な人なのだ。 

「人間は幸福になれるものではありません。幸福というものは、もっとむずかしいことです。それはたった一人の孤独な戦いであります。それは大変困難な道ではありますが、・・・・私の言うとおりの生き方をすれば、・・・・少なくとも幸福への入り口だけは発見できるでしょう」 

そう、この本は入り口だけを教えてくれる本、あとは勝手に歩きなさい。でもその入り口さへ見つけられずにこれまであたふたうろうろしてきた身には谷川の水のような清涼な一冊であった。