つまり「細雪」の主人公たちが

日本の田園都市の系譜を比較検討した本を読んでいて印象に残っていることがある。田園都市に多くの軍人たちが住んだのに比べて、常盤台にはあまり軍人が住まなかったと言うのだ。それが現在の街の雰囲気に引き継がれているという。確かに常盤台には田園調布など他の田園都市の系譜にある街とは違ったものを感じる。そのあと川本さんの「細雪とその時代」を読んで、街というのはだれが主役になるかで決まるんだと思った。僕はこの国で一番好きなのは六甲山麓阪神間の街だ。この本は六甲山麓阪神間の街は女性と子供たちが作った街なのだと言っている。僕が住む多摩ニュータウンは子育てがしやすいと言うことで、最近、若いおかあさんと子供たちが増えている。女性と子供たちが作る街が優れているということは、細雪が証明している。多摩ニュータウンが女性と子供たちが育てる街になってほしい。

2021年8月18日
今でもこの国で一番好きな場所、一番住みたい街は六甲山麓の街である。この表紙を見ているだけで、六甲山麓阪神間の街、いいなぁと思う。細雪って何がいいんだろう?よくわからないまま、なんかいいな谷崎って、大阪って、六甲山麓ってと思っていたら、「細雪」とその時代」で川本さんがその良さをちゃんと言葉にしてくれていた。
本や映画を街を主役にして読んだり見たりすることが多い。「細雪」もそうだった。この本の中で山崎正和丸谷才一の対談集「日本の町」からこんな一節が引用されている。
「考えてみると、阪神間とは女性が作った町じゃないかと思うんです。基本的に大阪の商人が住宅街として作ったわけですが、旦那は昼間ずっと大阪へ行って働いている。夜は新地あたりで遊んでるわけでしょう。ですから、あの町(芦屋から御影の町)を愉しんでいる人はといえば、女房子供なんですね。つまり「細雪」の主人公たちが、あの町(芦屋)を作ったわけですよ。」六甲山麓阪神間の町のあの柔らかさ、穏やかさは「細雪」の主人公の女房子供たちが作ったからなのだ。