やっぱり吉田健一がいいのだった

  • どうも仕事に着手する気にならないものだから、最近読んだ本をぱらぱらしていいたら、やっぱり吉田健一がいいのだった。
    「木戸が泊まっているロンドンのホテルの部屋からはテームズ川が眺められた。ロンドンでの木戸の一日は窓から河岸の並木越しに川が流れているのを見ることから始まってまずそのことがあってそれが顔を洗うとか着替えるとかいう先入主が働くのをその間だけ防いでいることが一日の基調になった。」p.160
    「ロンドンまで何しに行くのだと聞かれてリートン・アームスで飲みにと言っても構わないくらい木戸はその店に通った。それが英国の町に飲み屋がなぜあるかを説明するものであって飲みたいから飲むのであるよりも町にいてその気分を楽しみ、その眺めもそれが歩くに従って少しづつ変わる具合も自分が他の人間もいる場所にいることを感じさせて道とか家とか店の窓とかいうものが意味を持つ時にそれでもいつまでも歩いてばかりいられなくて町が自分の廻りで町であるのを続けることを求めるならばその為に飲み屋がある。」p.166