いつそれを言ってくれるか、ずっと待っていたんだ

ずっと昔、村上さんてどこがいいんだろうと思った。50年くらいの時間がたって、今ようやく、あ、なるほどなと思う。確かにこれをなんと呼べばいいんだろう、とりあえず、ポップだなぁとでもよんでおいて、またしばらく読んでみよう。

2022年2月23日
長い旅が終わった。東京から四国まで。佐伯さんが素敵だ!ホシノちゃんも、ナカタさんも、大島さんも。会う人会う人がみんな違っているけど、みんな良くって。大島さんはいつもユーノスロードスターで颯爽とやってきて、佐伯さんはいつもフォルクスワーゲンゴルフのエンジン音を響かせて帰っていく。ちっともよくわからない物語なのになぜかとっても端正で。夢を見ているような覚めているような。でもようやく旅は終わった。さぁ東京にに帰ろう!時々鳴る「大公トリオ」愛聴盤にしなきゃだ。
「世界はメタファーだ、田村カフカくん」と大島さんは僕の耳元でいう。「でもね、僕にとっても君にとっても、この図書館だけはなんのメタファーでもない。この図書館はどこまで行ってもーこの図書館だ。僕と君のあいだで、それだけははっきりしておきたい」「もちろん」と僕は言う。「とてもソリッドで。個別的で、とくべつな図書館だ。ほかのどんなものにも代用はできない」僕はうなづく。「さよなら、田村カフカくん」と大島さんは言う。「さよなら、大島さん」と僕は言う。「そのネクタイとても素敵だよ」彼は僕から離れ、僕の顔をまっすぐ見て微笑む。「いつそれを言ってくれるか、ずっと待っていたんだ」p.425