夏彦くんとヘガティ

この本がなんだか好きで、本の好きのなり方にこんなのがあるのだなぁと思った。で、表紙をスケッチしてみたのだけれど、夏彦くんとヘガティはまさにこういうやつなんだろうなぁ。

2019年1月29日
川上未映子さんの「あこがれ」を読んだ。川上さんは変てこな人で風変わりな人で、そこが好きなのだけれど、書くものはまっすぐで気持ちがいい。この物語は夏彦くんとヘガティーという小学生の男の子と女の子の話で、というと初恋だの友情だのの話かなと思うけど、そんなのじゃなくて、もっとなんでもない淡々とした物語で、人と人は「一緒にいるよ」と伝えたい時、抱擁だとか手をつなごうとかということになるのだけれど、ヘガティー大丈夫かなって思った時、夏彦くんはヘガティーに「肩組もうか」っていう。もう僕たちは「肩組もうか」などというようなことは言わなくなってしまっているけれど、でも川上さんは抱擁や手をつなごうなんてことよりも「肩組もうか」って、いいよねと言っている。この小説では人の名前もとってもよくて、男の子は麦彦、女の子はヘガティ、そしてその仲間たちはチグリスやユーフラティスやリッスンやドゥワップという。 登場する犬もウールやコットンなんていって、もう僕はこれから犬を飼うことなどないと思っているけれど、今度また犬を飼うようなことがあればコットンと名付けようと思ってる 。それからこの二人は「さよなら」とか、「またあした」とか言う代わりに「アルパチーノ」というのだけれど、そんな不思議な夏彦くんとヘガティーだけの挨拶の言葉にも川上さんのヘンテコなところが出ていて、とってもいいと思った。