「品格ある衰退」ということ

終わった人内館牧子著を読んだ。よほど身につまされたのか一気に読んでしまった。主人公、田代壮介は63才、終わってしまった人。その10才も年上の僕であればもうすっかり終わってしまった人になるなぁと思いつつも未だに終わった感はない。かといって明るい明日があるとも思えない。内館さんがあとがきで書いている。「品格ある衰退」ということをイギリスという国を例にとって言っている。大切なのは終わったか終わっていないかということではなく、品格を持ち続けられるかどうかだと。イギリスというとこんな一節を読んでなるほどなぁと思ったことがある。
「そう、今イギリスの安定という話が出たけれど、実際イギリスの安定というのは、十九世紀にあったイギリスの安定さから見れば随分危機的なところにあると思うが、そのくせ嵐の中を通り抜けて行くイギリスという船は、いつまでもかなり安定度のある状態で、その嵐の中を抜けていっておるのは面白いと思うのだが。 つまり非常に落ち着いた形で嵐は感じながら嵐の中を行っておるという。結局それは人間に対する非常につよい愛情という言葉で言っていいと思います。」吉田健一対談集成

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