プルーストくんよろしく頼むよという

今年は何をしようかと思ったのだけれど、そうかプルーストを読もうということになった。本というのもいろいろあって、次はどうしようだの、何にしようだのと悩むのだけれど、誰にもこれは別格というようなのがあって、本であって本でない、これは絶対と言ったものがあって、それは聖書であったり、源氏物語であったり、罪と罰であったり、資本論であったり、それぞれの人にとって、これだというものがある。そんなのは文学史的な評価とか、歴史上の意味だとか、そんな客観的な評価とは関係なく、お守りのようなもので単なる思い込みでしかないのだけれど、僕にとってはなぜかこれだった。でもそれは宝物であるからなかなか手が出せるものではなくて、生きている残りの時間とか、少し時間ができたからとか、いろいろ世界をさまよってきたけれど、どうもこれだなぁ、この界隈で生きるんだとか、ものすごく独断と偏見で決めている本というものがあってそれがプルーストだった。 
それでえいやっと注文したのだけれど、それが先日届いた。おぁ、やっぱり大変そうだなぁ。実は一巻づつ買って、一月に一巻ずつとも思ったのだけれど、実はどうも読み通せる自信がなくて、それなら全巻揃えて、背水の陣を敷こうと思ったのだった。よし、これで準備が整ったというか、老いる準備ができたというか、これで安心して年が取れるぞというか、プルーストと一緒に人生の最後を生きていくんだとか、なんだか肩に力が入るけれど、これさへ読んでいれば怖くない、侍にとってのいい刀みたいに人にはそれぞれにこれを持っていれば安心というものがあって、そんな意味もあるのだった。 
それでようやく第1巻「スワン家の方へ I」が終わったのだけれど、やはりちょっときついところはあるけれど、シャンパーニュの田舎町コンブレーを サンザシの花の香りを嗅ぎながら、鐘の音聞きながら、 ぼつぼつと歩いた。さぁこれからどうなるのだろう?プルーストくんよろしく頼むよという気分だ。

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