いいなぁ、昔とちっとも変わらないなぁと言うような

随分年をとったから、もう旅はいいかなって、決めていたけれど、辻さんの一言で、ごめんなさい、辻さんもうそんなこと言いませんからと思ってしまうのだから、辻邦生と言う人に出会えてよかったと思う。

2019年10月14日
どうも新刊を開こうという気が起こらなくて、でも何か読みたいなぁと自室の本棚を眺めていると、よく目があってしまうのが辻邦生さんで、ぽつぽつと気になるところを読み出したらやっぱりよくて、どの部分もどの部分もやっぱり辻さんの世界で、このところの疲れがふっと消えていく。もう人生も終盤なのだけれど、本棚でふと目があって、取り出してみたらやっぱりよくて、いいなぁ、昔とちっとも変わらないなぁと言うような作家に出会えることができるのって幸せだなぁと思う。
プルーストは「明日死ぬことが分かっていてもヴェネツィアに旅立つと言っているが、〈美〉に浮かれ出る心とは、たしかに〈死〉を超えている。それは〈死〉の恐ろしさを知らないと言うことではなく、むしろ〈この世〉の興亡利害に無関心であったように、〈死〉に無関心になる、と言えようか。〈死〉の方を見るよりは、「梢の花」の方があまりに心を甘味に酔わせるので、そんなことは忘れ去られていくのだ。」(永遠の書架に立ちて、辻邦生)p.139

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