『生きのびるためのデザイン』

日々今おこっているような状況に対して、デザインに携わるものとして何ができるのか、そんなことを考えていました。
そうしたら、ずいぶん昔の本なのですが、『生きのびるためのデザイン』という本のことが頭に浮かびました。もう40年近くも前に書かれた本だと思います。
読んではいないのですが、刻々映し出される被災地の惨状を見るうち、そのタイトル『生きのびるためのデザイン』がふと思い出されました。
『生きのびるためのデザイン』今こそ待たれているのだと思います。
私たちは落ち込んで眠りから覚めた朝でも、元気の出るデザインの服を着たとき、『よし、今日もっ!』と思うものです。
デザインから生きる力を得るのだと思います。まさに良くデザインされた服は生きのびるためのデザインなのしょう。
私も身を置くランドスケープ デザインの世界では、アメリカ合衆国ワシントンD.C.にある、どこまでも無数の死者の名前を刻みこんだ長い長い黒御影のベトナム戦争戦没者を悼むモニュメントは、見るもの誰もを、もう二度と繰り返さないという思いにさせてくれます。
デザインする行為は私たちが考える以上に、生のびるための力を与えてくれるのかもしれません。
今のこの状況に対してデザインに何ができるか、そう簡単に答えが出る訳ではないし、事態の深刻さを考えるにつけ軽々に提案などすべきではないかもしれません。
でも、朝着る服の力を思い浮かべるならば、あの自衛隊の制服、あの迷彩色の制服は、あくまで戦時のためにデザインされたものでしょう。
被災地の救援という戦時とは異なる活動においては、全く異なる制服のデザインの考えられてしかるべきだと思います。
私たちが朝、元気になれるように、被災した皆さんが元気になれるような、自衛隊員が『さぁもうひと頑張り』と思えるような、そんなデザインがあるような気がします。
また、最近ではブルドーザーやユニックなどのデザインもかつてとは異なる、楽しいものが多く見受けられるようになりましたが、やはり被災地で活躍する重機械にはまた違った表情が求められているような気がします。
被災した子供たちが、『あっ、ステゴザウルスが助けに来てくれたっ』と思うような。
ある意味、遊びの要素とも呼べるもので、一歩間違えば場に最もそぐわないものになる危険を持つため、慎重に慎重を重ねなくてはならないのですが、
私が今、思い浮かぶことはそんなことしかないのですが、それぞれのデザイン分野において、今こそビクター パパネックの思想が現実のものとされる時が来たのかもしれません。