つまらない「うれしさ」

いろいろ探し求めても、結局こう言うことなのだと思う。実につまらない「うれしさ」なのだ。きのうせんせいにちょっとだけほめられた。まる一日経とうしているけれどいまだにうれしい。でもこういうつまらない「うれしさ」は一人で静かに味わうしかない、そこがちょっと淋しい。
ぼくを研究に駆り立てていたのは、じつにつまらない「うれしさ」だった。
日高敏隆
 人は生きがいを求め、生きることの意味を問う。けれども日々の生活を顧みれば、そんな高邁(こうまい)なことではなく、人にちょっと褒められたこととか、今日の作業がうまくいかなかったこととかに心を乱高下させている。仕事については「業績」ばかり問題にされるが、自分を突き動かしてきたのはデータ化できないワクワク感だったと動物行動学者は言う。「生きものの流儀」から。(折々のことば・鷲田清一 朝日新聞2017年3月26日朝刊)