世に憤らず即かず神妙に膝に手をおいて

日曜日の午後である。ラジオからは日曜喫茶室。久しぶりなことだ、これぞ日曜日という感じになる。ダイアナ・クラールが、バイバイ・ブラックバードをうたっているから、なんだかもうすっかり大人の日曜日だ、糅てて加えて「庭をつくる人」をちらちら、日本酒をなめるように読んでいる、こんな時代があったのか、こんな日本があったのか。「世に憤らず即かず神妙に膝に手をおいて」
「小華族」の時代からあの人は長い間年輪を刻み、刻みながら何かを考え通して今日まで来た人である。ぱっとした明るい目にはあわないが少しづつ適度なよい光線に育てられ、ほっこりといい工合に熟れて来たのである。世に憤らず即かず神妙に膝に手をおいて来た人である。これは尊敬といふ言葉ではなしにしみじみとこの先人の踏んだ羊腸たる道のりを眺めるべきである。そして初めて昔ありし如く今なほあるべく、行末永いゆえんであろう。
「庭をつくる人」室生犀星著 『徳田秋聲氏の文章』より
http://www.youtube.com/watch?v=Wa_mKfYt95M