世の一切を心に沈め

こんな本を読んでいる。「庭をつくる人」は「貧にして世に逆流せず、また心を乱さざるの徒」でなくてはならない。心乱れる今日この頃、犀星を見よ!
何も欲しいものもなく、在るもので我慢をし、多くは心で暮らしている謂ではないかと思う。貧にして世に逆流せず、また心を乱さざるの徒を言うのであらう。世の一切を心に沈め置く大量の謂ではないか。・・・・・赤貧ということは文字通りのものでなくて、心の上の合言葉に過ぎない。再び立てないような貧乏を言ふのではなく、なほその中に王侯をしのぐ風雅を徹した気もちを言うのであろう。僕のごときはこんな赤貧ならば甘んじて受ける覚悟を持っているし、現に営みつつもいるのである。
魚眠洞雑記 十 赤貧 「庭をつくる人」室生犀星著 ウェッジ文庫より
http://www.amazon.co.jp/庭をつくる人-ウェッジ文庫-室生-犀星/dp/4863100493