田舎の学生だった僕はびっくりした

むかし京都の百万遍にcarco20 と言う古いジャズばかりかける店があって、そこのマダムはいつもちょこんとおむすびにした髷を結ってて、亭主はもっぱら京大のLだという噂の坊主頭の男だった。京大のLというのは京都大学文学部共闘会議のことで、あいつはLやでなんてちょっとイキがって呼んでいた。そこには銭湯帰りの貧乏学生がふろおけを持って本を読んでいたり、お坊さんが下を向いてジャズを聴いていたり、近所の老舗の旦那衆がコーヒーを飲んでいたりしていて、京都では貧乏学生とお坊さんと旦那衆が静かに古いジャズを聴いている、これが1000年のみやこかって、田舎の学生だった僕はびっくりした。そしてそんな 人たちの真ん中の大きなテーブルの上にはいつも大きな花瓶にたくさんの花が無造作に投げ込んであった。
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