born after 1970

ずっと本箱の隅に眠っていたけれど、久しぶりに外に出してあげた「桜前線開花宣言」やっぱり元気な若い歌人たち。 

抜かれても雲は車を追いかけない雲には雲のやり方がある 松村正直
悪くない 置き忘れたらそれきりのビニール傘と僕の関係 松村正直
原発を贖うという若きアラビアよ(もし神がそう、お望みならば) 斎藤芳生
花びらを上唇にくつつけて一生剥がれなくたつていい 田村元
封筒に書類を詰めてかなしみを詰めないように封をなしたり 田村元
俺は詩人だバカヤローと怒鳴って社を出でていくことを夢想す  田村元
あなたがやめた多くを続けてゐる僕が何も持たずに海に来ました 光森裕樹
散髪の帰りの道で会う風が風のなかでいちばん好きだ 岡野大嗣
えっ、七時なのにこんなに明るいの?うん、と七時が答えれば夏 岡野大嗣
消しゴムも筆記用具であることを希望と呼んでおかしいですか 岡野大嗣
ぎっしりと団地にみどり童話にもこんなみどりなかっただろう 花山周子
歯磨きはもう飽きたからやめようか、というふうにいかない人の営み 花山周子
たよりになんかならないけれど君のためのお菓子を紙袋のままわたす 永井祐
今日は寒かったまったく秋でした メールしようとおもってやめる する 永井祐
ひきつづき私は私であるでしょう ところによりあなたをともなって 笹井宏之
いつどこで誰といたってあたしだけ2センチくらい浮いている気がする 加藤千恵
あいまいが優しさだって思ってるみたいですけどそれは違います 加藤千恵
バラバラにやってきたからバラバラに戻ってくだけなのに寂しい 加藤千恵
出来立ての一人前の煮うどんを鍋から食べるかっこいいから 平岡直子
おはじきをなめる子供は無表情 硝子の味はすごくさびしい 小島なお
詩は遊び?いやいや違う、かといって夕焼けは美しいだけぢや駄目だ 薮内亮輔

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