ようやく「庭って楽しいものなんだ」

僕たちはこれまで豊かな庭園論を持ちえていなかったような気がする。これまで庭を論じた本で、これは面白いと思うものに出会ったことがなかったような気がする。このなんとも捉えどころがない空間の魅力を言葉にすることはとても難しいのかもしれない。でもこの本を本屋さんの棚から取り出した時、ひょっとしてと思った。そして果たしてそうだった。この本には柳沢吉保の孫・ 信鴻の六義園での隠遁生活が書かれているのだけれど、江戸時代の大名の庭がこんなにも賑やかで、おいしそうでもあり、 文化の香りもして 、エコロジカルでさへあったとは。そしてその庭をご隠居も、諸大名も、庭師も、はたまたホトトギスや青蛙さへも楽しんでいた。ようやく「庭って楽しいものなんだ」という当たり前のことが書かれた本が出てきた。