それが手に入れば幸せといっていいのだろう

最近ぼんやり、考えていたことはこんなことだったんだ。最後は一枚の絵になるのだな、今はまだ乱雑をきわめているのだけれども、きっと絵になるのだな、分かった、待ってみせるから。
「年をとるにつれ、人の記憶の配置というものは変わっていく。精神科医中井久夫さんは『徴候・記憶・外傷』でそう指摘する。いわば縦並びから横並びへ。若い頃は日めくりカレンダーのような年代記だが、だんだん時間の順序があいまいな遠近法になり、最後は一枚の絵になる、と。単純化した話ではあっても、なぜか納得させられる▼人生の記憶の画面を眺める無為の時間。それが手に入れば幸せといっていいのだろう。敬老の日に皆様のご長寿を祈りつつ。」9/15朝日新聞朝刊・天声人語より