大切なのは、応じ合って呼び交わし続けること

昼食のあと何日か遅れの新聞を読む。新聞は新しいことがいのちなのだろうけれど、ちょっと遅れてるという所がなんとものどかだ。それにその内容がなるほどなぁと思うものだったりしたら一日がうんとよくなる。今日の記事は音楽家ピエール・ブーレーズの言葉だけれども、世界を音楽の言葉で語るととても分かりやすいなぁと思った。
「この世に強権的支配者はいらない。誰しも主役。誰もが孤独。それに耐える。しかも個々はハンマーのような存在感を失ってはいけない。怒るときは怒る。「プリ・スロン・プリ(ひだにしたがうひだ)」。世界はまっすぐにならない。ひだやしわばかり。そういう曖昧さに耐える。偶然も当たり前と思う。そのくらいがいい。「エクラ・ミュルティプル(輝き、多様な)」。世界はひたすら多様性に満たされ、豊饒(ほうじょう)にきらめき続けるのがいい。誰も理屈で単純化できはしない。「レポン(応唱)」。多様なものが孤独と曖昧さの中で単にバラバラになってはまずい。大切なのは、応じ合って呼び交わし続けること。きしみやこすれや堅苦しさを、ブーレーズは嫌った。」
朝日新聞2016年1月12日朝刊「 ピエール・ブーレーズさんを悼む」作曲家・藤倉大、音楽評論家・片山杜秀
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12154644.html?rm=150