きのうは久しぶりに風景探偵団、もう十年以上もいっしょに、だらだらと街を歩きつづけている。
今回は西荻窪、この街は、このところ好きでよく来ていた。今回あらためて、なぜそんな風に思うのか、わかった、戦災をあまり受けなかったことを改めて知った。戦争は街の最大の破壊者でもあるのだということを改めて知った。
この間読んだ『小さなおうち』中島京子著のことを思い出した。あの物語の空気が所々に残っていた。
夕方からの懇親会でTさんが森鴎外がこんな事を書いていると教えてしてくれた。
「東京では都会改造の議論が盛んになつてゐて、アメリカのAとかBとかの何号町かにある、独逸人の謂ふ Wolkenkratzerのやうな家を建てたいと、ハイカラア連が云つてゐた。その時自分は「都会といふものは、狭い地面に多く人が住むだけ人死が多い、殊に子供が多く死ぬる、今まで横に並んでゐた家を、竪に積み畳ねるよりは、上水や下水でも改良するが好からう」と云つた。又建築に制裁を加へようとする委員が出来てゐて、東京の家の軒の高さを一定して、整然たる外観の美を成さうと云つてゐた。その時自分は「そんな兵隊の並んだやうな町は美しくは無い、強ひて西洋風にしたいなら、寧ろ反対に軒の高さどころか、あらゆる建築の様式を一軒づつ別にさせて、ヱネチアの町のやうに参差錯落たる美観を造るやうにでも心掛けたら好からう」と云つた。」
森鴎外『妄想』
参差錯落:いろいろと、ふぞろいの物が入り混じっているさま。「参差」は長短・高低入り混じり、ふぞろいなさま。「錯落」はたくさんの物がごたごた入り混じるさま。
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