あるところで挨拶をしなければならないので「挨拶はたいへんだ」「あいさつは一仕事」丸谷才一著を読んだのだけれど、いい本ほどそうなんだけれど、ちっとも役に立ちそうにない。でもこれがとても面白くて、お別れの会や結婚式や文学賞などの授賞式での丸谷さんはじめお祝いを受ける人、お別れされる人たちがめっぽう面白くて、それぞれの人生や丸谷さんとの交情がとってもコンパクトに書かれていて、挨拶って文化であり文学であるなぁと感じさせる本なのである。特に印象に残るのは弔辞であって、僕のまわりでもこれからいろんなお別れがあると思うけれど、そのどれもが湿っぽくも悲しくもなくて、ああいいお別れだなぁと思ったものだから、これからはしばらく弔辞ばかり集めた本を読んでみようと思った。メメント・モリ「死を想え」というとなんだかひどく近づきがたく考えてしまうけれど、こんな風にからっと、ちょっとだけ悲しく「死を想って」みたいと思った。