風が嗤つているのを見たか

なんだかすごいなぁこの人はと思いつつも、なかなか到達できない歯がゆさから、書き写しては見たものの、ほんの少し前に出ただけ、うんうん言いながら読みすすむしかないのかもしれない。

しやああんめえ
高木佳子

しやああんめえは仕方なきこと、吾ら生くるこの現在はしやああんめえか
老いたりし男ひとりが除きたる土くれを見、顔覆うなり
街はいま復興のこえ、新しき年新しき人あたらしき家よ
復興の宴にはしやぐしばしばを 風が嗤つているのを見たか
災ひをこの倖せに変へたのだ昂ぶるこえの殆どが汚る
被災とふ絶対かざし足ることを知らぬ人らに蝕まれいる
雨が降り、しやああんめえのとつぶやきて汚泥はけふもやはらかきかな

2013年1月15日朝日新聞夕刊「あるきだす言葉たち」より