「そこにいる」というその事実に比べたらやっぱり

最果さんは、詩集「恋人たちはせーので光る」を読んだけれど、今ひとつぴんとこなくて、でもやっぱり最果さんのこと知りたくて、こんどはエッセイにしてみたら、ぽんぽんと歯切れが良くて、そうかそういうことだったんだというような、パラダイムシフトというか、目から鱗というか、そんなことばが潜んでいて、やっぱり諦めずに読んで良かったと思った。なかでも「誰かとすれ違ってふと目があった時のような」は、なんども繰り返して読んでしまった。
「いつか自分の言葉で、誰かとすれ違ってふと目があった時のような、そんな瞬間が作れたらいいなと思っています。何も伝わらないかもしれないけれど、その代わり、そこにお互いがいたというそのことが瞳の奥に残ればいい。ただわたしは生きていて、あなたも生きているんだということ。そんな当たり前のことが言葉の上にも描けたらいいな。その人がどんな人であるかなんて、「そこにいる」というその事実に比べたらやっぱりとてもちっぽけだな、と思います。」p.164