此手紙は御覧遊はしたら破いて下さい

淋しい淋しいという漱石、御父さまも海へはいりたいという漱石、いいなぁ漱石

2017年7月9日
short tripがいい。もう大きな旅行はいいかなと思う。鎌倉長谷の鎌倉文学館漱石からの手紙、漱石への手紙」展に行ってきた。「小生は人に手紙を書く事と 人から手紙をもらふ事がだいすきである」森田草平あて封書 明治39年1月7日付、というこの展覧会を楽しみにしていた。妻鏡子からロンドン留学中の漱石への手紙が印象に残った。鏡子は悪妻だったと聞いたことがあるけれど、そんなことはないチャーミングな女性だ。子どもたちに絵葉書を送る父としての漱石が好きになった。立派な文豪としてではない漱石が手紙や葉書の中にいた。それは文部省からの博士号授与を返上する漱石が「ただの夏目なにがしで暮らしたい」と書いたことと重なる。
「 あなたの帰り度くなったの淋しいの女房の恋しいなどとは今迄にないめつらしいことと驚いて居ります しかし私もあなたの事を恋しいとおもひつつけている事はまけないつもりです・・・・・御送りした写真を御覧遊はしたでしやう 此手紙は御覧遊はしたら破いて下さい」明治34年4月12日 鏡子から漱石宛の封書
「 大仏の御腹のなかへは御父さまもまだはいった事がない、御前方はいい事をした。御父さまも海へはいりたい。東京のうちは静かだ、下飯坂さんの端書は受取ったらう」大正元年8月10日付 長女筆子宛はがき