どうぞ猫のように生きてください

空洞は空洞としてスカスカでいいのです。横尾忠則
「タダノリ君、どうぞ猫のように生きてください」と、先に逝った猫が美術家に語りかける。「君」の心を煩わす老いや死も、いえいえ私への愛だって、いうなれば「妄想」。妄想とは穴を恐れ、埋めてゆくこと。「君」は芸術でそれをしようとしている。穴を埋めるのではなく、「あっ、そう」くらいに空洞を空洞として無心に生きなさいと。愛猫の画文集「タマ、帰っておいで」から。朝日新聞4月22日 折り折りのことば 鷲田清一