人生はこんな風に終わっていくものなのかなぁ

高校生の時、青砥は須藤に付き合ってほしいと言った。昔の高校生はよくそんな風に言ったものだった。須藤はノーと言った。そのあと別々の人生を歩んで50を過ぎた頃、青砥と須藤は、生まれ育った町の病院の売店で出会った。なんとなく「よっ」と言って「よっ」と答えて、時々発泡酒なんかを一緒に飲むようになった。ボソボソボソボソと話しながら。そのボソボソボソボソはおよそ小説らしくなくて、あまりにボソボソとしていて、ただそのボソボソとした言葉のやりとりは、よく知らないけれどギリシャ悲劇やシェークスピア劇などの台詞にも負けないんじゃないかなと僕は思った。例えば「青砥はさぁ、なんで私を「おまえ」っていうの?」例えば「おまえ、あのとき、なに考えていたの?」「夢みたいなことだよ。夢みたいなことをね。ちょっと」人生も50を過ぎるといろんなことが起こる。その多くはあまりいいことではないけれど、さっと薄日のような日が差してくることもある。そんな話だった。人生はこんな風に終わっていくものなのかなぁ、しみじみと淡々と。

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