もしもう一度人生を生き直すことができるのなら

ヴィオラかあさん」は人生に失望も落胆もしなかったそうだ。広津和郎の「楽観しすぎてはいけない、悲観しすぎてはいけない」という言葉が好きだ。でも「ヴィオラかあさん」の方が断然いい。「失望しない落胆もしない!」もしもう一度人生を生き直すことができるのなら、この言葉を叩き込んでおきたいと思う。

「今日は、私があなたを生んだ日です」ヤマザキマリの母

漫画家の誕生日。珍しく電話をかけてきた母は開口一番こう告げた。「生むのにあんなに頑張った自分もおめでとうだな、と思ったわけよ」と。ヴィオラ奏者でシングルマザーでもあった母は、奔放さでは娘より数枚上だった。人生に失望も落胆もしなかった。「お母さん」然としない、最も身近な「大人のサンプル」だった。そのことに娘は救われてきた。『ヴィオラ母さん』から。(鷲田清一
2019年4月25日朝日新聞朝刊折々のことばから

https://www.youtube.com/watch?v=ntDnwBiORu8