藤田さんどうしたのって思った

もう終わってしまうから、先日急いで藤田嗣治展に行ってきた。なんだかすごい人で、なんだかすごい作品で、ちょっと悪い予感がしていた。楽しめなかった。心が動かなかった。藤田さんへの関心はちょうど世間と同調するように大きくなってきていた。だから彼の手紙の本や、装丁の本や、手仕事の本を読んでいた。準備万端のはずだったのになぜ。ちょっと混みすぎじゃないの、ちょっと詰め込みすぎじゃないのって思った。藤田さんのせいじゃないと思った。企画者が悪いんだと思った。でも時間が経つにつれて、藤田さんどうしたのって思った。藤田さんは大きな芸術家なんか目指しちゃいけないんだと思った。彼の魅力は、手紙の中のちょこちょこととした落書き、洒落た本の装丁や、家の中のちょっとした大工仕事なんかとのつながりの中あるんだと思う。それはちっとも悪いことなんかじゃない、僕は大きな芸術よりもそっちの方が大切だと思ってる。藤田さんは大きな時代の流れに時々、あっぷあっぷしてしまう。今回の大展覧会でもまた藤田さんは溺れそうになっていた。藤田さんは藤田さんのままでいなければいけないのに。ちょっと疲れたから帰りに芸大アートプラザに寄った。3年の休みを経てのリニューアルオープンの翌日だった。でも3年前のアートプラザはもうなかった、似て非なるものになっていた。