是枝裕和さん

この映画を見て、どうしてこんなに爽やかなんだろうと思った。あんなにカップ麺ばかり食べているのに、陽の当たりそうにもない家はこれ以上ないというほど乱雑に物が溢れかえっているのに。で、是枝裕和さんはどんな人だろうと思ったらこんな人だった。
初めて取材に来た日、そこにモジモジと座っているあなたが、見合いをしたときの夫とすごく似ていたの(あるエリート官僚の妻)
鷲田さんのことば
 映画監督の是枝裕和はかつてテレビドキュメンタリー制作のため、公害訴訟で行政と患者の板挟みになって自殺した官僚の妻を訪ねた。単純な図式で描きたくないが、彼女にカメラを向ける根拠もかける言葉も見つからない。そんな撞着(どうちゃく)を抱えたまま敷居を跨(また)ぐ。後に彼女からこう言われ救われた。『映画を撮りながら考えたこと』から。(鷲田清一
2018年7月29朝日新聞朝刊・折々の言葉から