これを読んでいて思ったのは、昨今の泰明小学校にまつわる騒動のことで、まさに名門と呼ばれるところであっても、学校である限りは「人の静かな回復を支える場所」であることを最も大切にすべきだと思うのだけれど、あの校長先生にとって学校とはどういう場所なんだろうということだった。
生まれてはじめて人間あつかいされました。
コウジさん
小学校もろくに通えず、読み書きのできない少年は、ぐれて少年鑑別所送りに。２６で天麩羅（てんぷら）店を始め、やがて授かった子どもの顔を見つめ「俺はなんにもおしえてあげられない」と涙を流す。そして夜間中学に通い始め、こう書けるまでに。昨今、学校は生きづらい場所として語られるが、人の静かな回復を支える場所でもある。夜間中学の元教師、松崎運之助（みちのすけ）の『学校』から。（鷲田清一）
2018年3月6日朝日新聞朝刊「折々のことば」から
