時間を、降り積もるように少しづつ、ゆっくり、ためていくこと

津端さんはいろんな時代を生きて来た。戦争中、海軍で戦闘機の設計をしていた。戦争が終わって、レーモンド事務所や坂倉事務所といったアトリエ事務所の自由でのびのびとした世界で腕を磨いた。でもじぶんの仕事は、焼け野原になったこの国に新しいまちをつくることだと考え創設期の日本住宅公団に入った。さまざまな新しい理想にあふれたまちの風景を描いた。でもこの国の住宅政策は、だんだんおかしくなっていく。違うなぁこれはと思った津端さんは、じぶんが計画に携わった高蔵寺ニュータウンに土地を買って、愛妻とともに小さな家と畑と雑木林を少しづつつくり始める。
この映画はそんな津端さんのこつこつとした生活につかず離れずカメラを回し続ける。映画の中で3人の建築家の言葉が語られる「家はくらしの宝石箱でなければならない」ル・コルビュジエ、「すべての答えは、偉大なる自然の中にある」アントニオ・ガウディ、「長く生きるほど、人生はより美しくなる」フランク・ロイド・ライト。津端さんはこれらの言葉を信じ続ける。「 自分ひとりでやれることを見つけてこつこつやれば、時間はかかるけれど何か見えて来る、とにかく自分でやること。 時間を降り積もるように少しづつ、ゆっくりためていくこと」そんな生活をつくり出していく。そして90歳になって人生最後の良い仕事に巡り会う。
津端さんの生活は「 長く生きるほど、人生はより美しくなる」そんな ライト の言葉がぴったりだ。みんなが少しづつ年をとっていく今、厳しい老後の現実ばかりが語られる。でも「 時間を降り積もるように少しづつ、ゆっくりためていくこと」、そうすれば 人生はより美しくなるのだと津端さんは言う。
https://www.youtube.com/watch?v=YkTQVlA2KJ4