親を送るということは

先週母を見送った。何かが終わったと思った。そうかこういうことだったんだ。もう成長はない。淋しいような、ほっとしたような。それじゃなにがあるんだろう。熟成、醗酵、衰退・・・・・よくわからないけれど、願わくば熟成に移りたい。
「親の介護とは、親を送るということは、自分の成長の完了じゃないか」伊藤比呂美
 「独居する老父の介護にカリフォルニアから熊本に足しげく通う。米国から入れた電話に返される言葉はまるで「心の拷問」のよう。神経と時間のやりくりは理不尽な試練のよう。だが、落ち込みと虚脱と思い直しのはざまで、父娘が時空を超えて出会う瞬間がある。もはや糊代(のりしろ)さえ残されていない関係の中に、人生の深いやるせなさが滲(にじ)む。詩人の介護日記「父の生きる」から。」鷲田清一朝日新聞2016年12月2日朝刊折々のことばから