白いポットを一つ

今回の旅で一番楽しみにしていたのは、小鹿田焼の窯元の集落を訪ねることだった。バーナード・リーチ柳宗悦が通った山里。あの時代の面影を残している数少ない窯場だということだったから、昇り窯の赤いレンガの煙突が、土をこねる水力のハンマーが、リーチの時代から、柳の時代からずっとかいがいしく働き続けている。でも、ちょっと元気がない、いまこそ、君たちの時代なのだから、元気を出せよと思ったのだが、でもその病は重そうだった。それでもやっぱり君たちはえらいと思ったのは、失敗したキズもののうつわたちがつくる村の風景だった。リサイクルだとか、リユースなどといった言葉が言われて久しい。それでも小鹿田焼の里がつくるリユースの風景ほどのを見たことがなかった。無名の陶工たちなのに素晴らしいうつわをつくり、無名の陶工たちなのに、どんなランドスケープ・デザイナーにも負けない風景をつくり続けてきた。いまはちょっと元気はないけれど、君たちが働き続けてくれないと困る。白いポットを一つ買った。かつてのチカラはないなと思いながらも家に持ち帰ったけれど、いまお茶の時間が前より数段幸福だ。ちょっと元気がないように見えても小鹿田の里にはやっぱり力があるのだなぁ。