菫程な小さき人に

今日はどこにもひっからずにさっさと思っていたのだけれど、これはいかんと思ったらやっぱり、なんだかたたずまいからしていいのだもの。
漱石文人として厳格に過ぎたように思えるが、しかし会うて膝を交え俱に短日夜長を語るには興趣自ら深い人であったらう。いつか書斎から見える庭に砥草の茂りがあったり芭蕉の古い株があったりした写真を見たことがあるが、さういう一石一草にも心うごいた人であったらうと思慕の念ひを持つようになったが、今は発句と漢詩とが何よりも素直な、世間を向ふに廻していない漱石翁が偲ばれて床しい。
「 菫程な小さき人に生まれたし」」
庭をつくる人 室生犀星著 ウェッジ文庫
漱石は庭の人だなぁ。