独活と慈姑と蕗と莢豌豆

岩本素白という人に出会った。名前だけは聞いていたのであるが、ここのところ急接近である。独活(うど)と、慈姑(くわい)と、蕗(ふき)と、出たての莢豌豆(さやえんどう)が好きな人だった。もうそれだけでじゅうぶんだと思う。しばらくは素白という人と一緒にいようと思う。
「独活すこし、慈姑すこし、それに蕗と出たての莢豌豆とがあれば、わたしの晩春の頃の食膳は事足りる。魚も肉も食べはするが、生来その生臭さを好まないのである。そのくせ、鰻と天婦羅とはひどく厭わない。甚だ変なことだが、もともと人間は変なものなのである。うど、ふき、くわい、共にこれを漢字で書くと、いろいろ変わった字を書き、甚だむづかしい。要するにそれらの文字の如く、わたしという者が変な者なのであろう」(晩春夜話ー南駅余情)
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