いい靴をはくと

ずーっとぼろぼろの靴を履いていた。かれこれ10年近く靴なんてものを買った事がなかったのだけれど、この間ちょっと改まった食事の会に呼ばれたものだから、大急ぎで、ちょっと気に入った茶色い皮靴を買った。で、それ以来、身がぴしっと引き締まったような気になっている。いい靴をはくと、靴はいいところに連れて行ってくれるという事をむかし姪に聞いていたものだから、急にいい靴が欲しくなっている。それで、きょう町を歩いていたら、これはいいぞと思うものが見つかって、こんどは是非これにしようと決めた。むかしから、宿屋の主人は靴を見るとか、そんな事を聞いていて、たいせつなものだとは思ってはいたのだが、その理由は判然としなかった。まさにいつだって「いったい、きみはどこに向かって歩いていこうとしているのだ!」と聞いてくるのが靴であって、そこのところが靴が大切な所以なのだなぁ。